灯台のひと

「灯台のひと」

静かな月夜の海。
少年は海の向こうに見える、あの色とりどりの光を求め、暗く広い海をひとり、進んで行くことにしました。

しかし荒波がやってきて、船はこわれ、海に投げ出された少年は、もがきもがき泳ぐことになります。
今にも深い深い海の底へ飲み込まれそうになりながら、それでも必死に息をして、力の限り泳ぎます。
つかまれる物があればどんなにちいさな物でも、手を伸ばし、遠い遠いあの光を目指すのでした。

しかしたどり着くことはできません。

 

どれほどの月日がたったことでしょう。
少年はいつしか、ちいさな島の上の灯台になっていました。

暗く広い海で、その明かりを頼りにする人はたくさんいました。
灯台があるおかげで、船乗りは安心して船を漕ぐことができましたし、船乗りの帰りを心細く待つ家族もまた、その明かりがあるおかげで心を落ち着かせることができるのでした。

少年はいつしか、あの時目指していた光よりも、それはそれは確かに灯る、あたたかい光となっていたのです。

昼間は島の人々が灯台の下に集まり、ごはんを広げ、それはそれはにぎやかになります。

「灯る光に ゆらぐ波の音 潮風がはこぶ 島の恵み」

子どもたちは決まって、この海のうたを唄うのです。
その声をきくことが何よりの楽しみでした。

灯台は広い海を、遠くまで見渡せるようになっていました。
あの時目指していた色とりどりの光にも、この島から信号を送ることができるようになっていました。
そして、あの時の少年のように、ひとり、海の中をもがく者があれば、広がる海に伝え、そっと光を当てるのです。

灯台は長い間、人々に愛され、もう決して、ひとりではありませんでした。